「 新緑萌えるころ 」

注ぐ光りが眩しくて君のシルエットも光りに溶けていく確かに右肩下がりだった少し襟足の髪が伸びていた そのまま君の姿は消えてしまった新緑の頃光りは眩しく足元の影だけはくっきりと浮かぶ 生命の強さが緑の濃さに現れている風薫る五月に一つ歳をとりなが…

「 昔の休日は 」

休日が嫌いなときがあった君に逢えない、ただそれだけの理由で君がいない寂しさに長い夜は毒となってわたしを苦しめてきた眠れないまま、もがいてきた 今年も休日がたくさんあるもう体に廻るような毒のある夜にはならない君に逢えない寂しさは、風とともに彼…

「 そして眠る 」

風が吹かないままこの場所に留まってしまいやがて朽ちていけたならいいだけど君との思い出だけはどうしても朽ち果ててくれない 君の斜めになった背中と煙草をふかす横顔が似合っていた猫背な座り方に苦い珈琲が似合っていた 風の変わりに時が渦巻きこの場所…

「 独り、のわたしたち 」

独り、長い夜を過ごす君何を見て、何を考え、誰を想うのだろう 独り、わたしも長い夜を過ごし未来を見ようとし、君のことを考え、君を想っている 独り、誰もいないわたしたち手を繋ぎ、肩を抱き合い、頬を寄せ合う、そんなときが来るのだろうか 独り、長い夜…

「 眠ってはいけない 」

疲れた体は瞼を閉じようとするだけど、眠ってはいけない長い夜だから、雨の降る夜だから、月の見えない夜だから、君を想う夜だから、瞼を閉じても眠ってはいけない 君に告げたい言葉を探せないだから、眠ってはいけない君を愛する夜だから、君を思い出す夜だ…

「 大粒の雨が降る 」

夕暮になって地面にぶるかるように大粒の雨が降る雨と雨の間隔は広い 君の空からも大粒の雨は降っただろうか首をすくめ小走りする、君の丸まった背中が妙に愛おしくてたまらない君の背中で深く大きな染みとなっていく大粒の雨が羨ましくて 温みだした空気の…

「 どうして、 」

どうして、どうして、何をわたしは間違えた?だんだんと先細る道を歩いている体はふらふらしている後ろを振り返ってもぽっかりと大きな穴があるだけで歩いてきた道が後ろから崩れてきているどうして、どうして、こんな道になってしまった?頼れる人もなく独…

「 差し伸べても遠く 」

君の流す涙を拭いたくともわたしの差し伸べる手は届かない君の震える肩を抱きたくてもわたしの差し伸べる手は届かない 哀しい瞳で見つめる現実に桜吹雪は寂しさを誘う君の瞳に映る景色のなかで散った花びらは地面でつもる 君の頬を温めたくてもわたしの差し…

「 風もない夜に 」

どうしてこうも静かなのだろう草の擦れ合う音さえもしないような夜テレビの音は垂れ流しても何も聴こえはしない 風がない風のない夜にべったりとした暗闇がある目の前のものさえ見えなくなるような 風がない風のない夜に進めない帆船のように此処に留まるし…

「 花曇 」

曇り空に、薄紅の花が似合う悪戯な風に揺られやがて、花吹雪最後の煌きに似た花吹雪 虚ろな曇り空に映った想いは雲と一緒に流れ西の彼方へと向かう見送るのは、花吹雪 薄紅の花も霞む、花曇寒さも温かさも感じられず穏やかに風が吹くだけで古くなりゆく思い…

「 頁はめくられて 」

咲き乱れる花、舞い踊る風、広がる陽、 新しい頁はめくられてゆっくりと開いた景色のなかに君の姿はなく、影さえも見つけられない土埃となって消えた足跡の形さえも忘れてしまいそうな今日の頁を毎日めくっていく 散りゆく花、去りゆく風、消えゆく陽、 新し…

「 花冷えの夜に君を想う 」

穏やかな日差しのなかで透けそうな花びらをたおやかに開いている桜 染井吉野の儚い色合いにこの春の寂しさを募らせる花冷えの夜にますます募る想いは音をたてて吹く風に凍ってしまう 染井吉野、今年も忘れず咲く揺れる枝から薄い花びらは散り風が薄紅色の吹…

「 違う道があるのなら 」

いつ、どこで、この道に迷い込んだ?誰に押され、誰に騙され、この道に立っている?分岐点はまだ見えないこの道を歩いていくしかないような一本道 いつから、どこから、この道を歩いている?自分で選んで、自分で決めて、この道に立っているんだよね分岐点は…

「 蒼白い月灯り 」

ガラス窓も白いレースのカーテンもためらいもなく通り過ぎわたしが横たわる部屋へ忍び込む気づいているその蒼白さは、哀しみわたしを覆いつくしたがっていることをわたしに寄り添いたいのだと 知っているその蒼白さは、切ない涙を零したあとの瞳の色だとわた…

「 眠れない夜に 」

こんな夜に限って風も吹かない時計の針が刻む音だけが響く暗闇が嫌いだから今夜は電気を点けたまま眠くなるまで白い壁を眺めていよう 何も変わらない現実に押しつぶされてしまう前に君の胸に逃げてしまいたいのだけど君が待つことなどないと知っているから今…

「 一粒の雨が無数に降る 」

一粒、一粒の雨が何万粒となって降り続ける夜に雨の降る音を聴いては雨の流れいく音も聴いていた一粒が川になっていくそんな夜に流されながら横たわるわたしに時だけが耳元で囁くほら、もう海へ近づいてきた、と。 海のなかの一粒となった雨明日は、空へと向…

「 昔の歌に涙を滲ませて 」

誰かが歌う昔の歌に君とわたしが過ごした季節が重なり悲しい歌を更に哀しくする 瞼を閉じて聞き入る昔の歌の聴き慣れたフレーズが過去と交差して口ずさみながら途中で止めた 昔の歌に涙を一つ、滲ませても今のわたしは昔のわたしにはなれない見えなくなって…

「 背中に文字を 」

君が見せた斜めになった背中に「さようなら」と呟くこともできず元気でいてね、と願っていたあれから、随分と長い時間、独りの夜を過ごしてきた ねえ、君今は誰とお酒を飲んでいる?誰と話しをしている?誰と目を合わせている? かけ離れた、交わることもな…

「 そして、いつかは 」

この胸のなかに刷り込んだ、君のちょっと疲れた横顔と力仕事をしたことがないような手と煙草の匂いが染み込んだ髪の毛を時々は引きずり出し懐かしがっている 君の背中を見送ってから随分と時がたったのにまだ背中の皺が思い出される涙だって滲んでくる いつ…

「 夕暮時に君を想う 」

黄昏・・・・時々淡いピンク色の夕暮と出会う疲れた目に優しい景色が静かに暮れていく今日が終わる、この瞬間君を想いながら明日の君を想う 君の眺める夕暮は山から続く青のグラデーション千切れた雲が風に乗り流れていくわたしの元には辿りつかないけれど …

「 窓越しの風景 」

窓越しに眺めていた景色のなかに雲の隙間をぬけてやがて広がりをみせる日差し そうか、もう春はそこまで来ている風の流れも穏やかで窓越しの日差しさえも柔らかい表情をみせてくれる 外に出てみようか誘うように蝶が舞う君のもとへ連れていってくれそうだ カ…

「 君に何を語ろうか 」

聞こえる?この鼓動から生まれる言葉を空気を振動させて君の耳に届くまでに小さくなっていく届かない?この震える唇から吐き出される言葉が手が痺れるように君の背中に触れていたのに力が抜けていく 語ってはいたのだけど君には届かない二人の間を流れる風が…

「 傷がつれてくるもの 」

胸にある小さな傷はわたしの手がつけたもの思わず爪で引っ掻いていたその痛みは赤い一筋の血液だった流れ落ちることはなく皮膚に張り付いたままで消え去ることを拒んでいた わかっているこの痛みがやがて薄れることをこの傷跡も薄れて消えてしまうことも だ…

「 帰らないもの 」

いくら思い出してもあのときの風景はもう戻らない二度と帰らない君のように 帰ってくるのは、わたしの零す涙ばかりで繰り返し、さよならの意味を聞いてくる 帰らないもの君と過ごした場所と時であの夜の温もりで さようなら、の後に、またね、という言葉は続…

「 昼下がりの小雪 」

ちらちらと小雪が降る いつもの景色に哀しみを乗せて ほの暗い昼下がりに 白い染みを残して消えていく君の描く過ぎ去った景色のなかに あのときの吹雪は 残っているのだろうかわたしの手に落ちる 小雪のなかに あのときの雪化粧した街が見えている風が小雪を…

「 偽物のチョコレート 」

零れ落ちたのはビターチョコレートの欠片で溶けてしまったのは、わたしの我侭のせい 手渡すことのできない二人の距離を埋めるためにせめてチョコレートの写真を君に送りたい少しだけラブを込めて送信するね たぶん、戻ってくるのだろうね偽物チョコレートも…

「 目をつぶって 」

目をつぶって去年の今を思い浮かべて涙のかわりにため息をついて夜更けの時計の音を聞きながら今年なんだとカレンダーを見ないで瞼の裏に触れる君の姿にやはり、涙を一粒こぼして目は開けないまま去年の今のわたしと君の部屋を懐かしく思い出すこのまま、眠…

「 やはり、君が恋しい 」

霙に濡れながら背を向けて桜の枝にとまる烏遠くの空も見ないで、地面を見つめている わたしがそこにいた背中を向けて君の姿を見ようともしなかったただ自分の足元ばかりを見つめ冷たい空気に頭を垂れているだけだった それでも、季節はめぐり、日めくりをめ…

「 おやすみ、おやすみ。 」

おやすみ、おやすみ。 風も止んだ。 猫も眠ってしまった。 体が傾くまま 瞼が重くなっていくまま 意識が薄れていくまま おやすみ、おやすみ。 街灯が点いているから。 テレビは消えたから。 腕が下がるまま 足が伸びるまま 体が沈むまま おやすみ、おやすみ…

「 愛されたいの向こう側 」

君の愛を独り占めしたくて君の時間をたくさん欲しくて君の優しい瞳をみたくて君の暖かな言葉が聞きたくて 心から溢れるほどに愛してきた一日中君を想い続けた君への言葉を探し続けたささやかなことにも喜んできた 満たされるためにたくさん君に求めてきた愛…