「 傷がつれてくるもの 」


胸にある小さな傷は

わたしの手がつけたもの

思わず爪で引っ掻いていた

その痛みは赤い一筋の血液だった

流れ落ちることはなく

皮膚に張り付いたままで

消え去ることを拒んでいた


わかっている

この痛みがやがて薄れることを

この傷跡も薄れて消えてしまうことも


だけど。

君との記憶は消えない

痛みが薄れることはあっても

君の姿は消えない

深く深く胸の中へ

沈んでいった傷が一つある



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