「 背中に文字を 」


君が見せた斜めになった背中に

「さようなら」と呟くこともできず

元気でいてね、と願っていた

あれから、

随分と長い時間、独りの夜を過ごしてきた


ねえ、君

今は誰とお酒を飲んでいる?

誰と話しをしている?

誰と目を合わせている?


かけ離れた、交わることもない二人の世界が

それぞれの季節を迎えようとしている

君の背中に、

「忘れないで」と書けたなら

君の胸の中にまで染み込んでいただろうか

「でも、愛している」と書いたなら

君は振り返っただろうか


斜めになった君の背中が懐かしくて、

それでも更けていくだけの夜に

独り静かに過ごしていた






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